大人の自分がインナーチャイルドを癒す(Vol2)
2025年11月20日 22:29

大人の自分がインナーチャイルドを癒す(Vol2)
大人の自分がインナーチャイルドを癒す(Vol1)はこちら
前回は「安全と安心が、インナーチャイルドを癒すための土台となること」「土台ができてから、インナーチャイルドが本当の自分を見せるまでには、少し時間がかかること」をお伝えしました。今回は、その続きを見ていきたいと思います。
インナーチャイルドが負の状態を見せるとき
インナーチャイルドは、自分の好きなことを続けることで安全と安心を感じ始めます。しかし、それだけではまだすべてを委ねてはくれません。なぜなら、負の状態——つまり傷ついた自分の姿——をまだ見せていないからです。ではその負の状態はどのようにして現れてくるのでしょうか。
負の状態は、多くの場合「からだの症状」として現れます。インナーチャイルドは傷ついているので、その傷ついたときに被った症状が、からだを通して出てくるのです。
症状をどう受け止めるか
私たちは何か症状が出ると、「悪いものである」と咄嗟に判断し、からだから追い出そうとします。たとえば、どこかが痛ければ痛み止めを飲む、呼吸が苦しければ医者に行くなどです。もちろん、原因がわからなければ、医者に診てもらうことは大切です。しかし、からだに異常が見つからない場合は、インナーチャイルドからのサインである可能性が高いのです。
インナーチャイルドが症状を出すのは、「この大人は本当に信じても大丈夫なのか?」と確かめるためなのです。この時に症状を追い出そうとすれば、さらに症状を強めます。そして、自分の存在に気づいてくれるのを辛抱強く待っているのです。それでも、大人の自分がインナーチャイルドに気づくことができなければ、インナーチャイルドは、「この大人は信じられない」と感じ、立ち去ってしまいます。
それは、症状がある時突然スッと消えるか、あるいは症状だけがずっと残り続けるかということからわかります。挙句の果てはあちこちに違う症状が現れ続けるということも起こり得ます。
症状がスッと消えたからといっても、簡単には喜べません。なぜなら、心の辛さは残ったままなので、苦しさは続きます。この時に理解されなかった苦しさは、さらなる痛みとしてからだに残ります。そして、生命の危険を及ぼすような症状として、何年か後に出てくる場合もあります。
「ありがとう」と伝える
そうならないために、症状が出てきたときには、追い出さないでください。そして、まず「出てきてくれてありがとう」という言葉をかけてあげてください。なぜなら、これほどの症状を抱えながら、インナーチャイルドは外敵から耐えていたのです。そして、この症状のおかげで自分のからだが壊れずに済んだのです。
だからこそ、インナーチャイルドを労うためにも「ありがとう」と伝えてあげましょう。これは、以前「変わりたい自分、変わりたくない自分」のところでも書いたように、守ってくれていた者に対して「ありがとう」と伝えるということです。
インナーチャイルドと「温もり」
インナーチャイルドが、本当に安全と安心を感じ始めると、今度は「温もり」を求めるようになります。誰かに「傍にいて欲しい」「抱きしめられたい」などの欲求によって、過去に得られなかった「温かさ」を得ようとします。これは、自然な反応です。コンパッションを育むうえで「温かさ」は大切なのです。
この「温かさ」は身近な人、例えば妻や恋人、友人などから得ることができるかもしれません。あるいは、飲食店などで接客してもらったときや、たまたま出会った人からかけられた一言に感じるといったこともあるかもしれませんね。いずれにしても「温かさ」を得られることが、自分を癒す土台となっていきます。
「温かさ」に固執した苦しみ
ただ、この「温かさ」に固執し過ぎると、思いもよらぬ苦しみを生む場合があります。それは、固執してしまうと、執着が生まれるからです。そうなると、「この人は私の救世主」「私にはこの人しかいない」「私はこの人を求めて生きてきた」といった思い込みに変わり、相手に過度に依存してしまうのです。癒されるどころか、一種の依存症になってしまいます。
「温かさ」をくれる相手が、「私がこの人の痛みを取ってあげよう」「私がしっかり癒してあげる」などと思ってしまうと、2人の状態は、融合してしまうことになります。
融合は共依存を生む
融合とは、両者が相手の境界線を無視して、相手の中に入り込んでしまい混ざり合うということです。上記においては、「共依存」という関係になります。「共依存」は、相手といい関係を築いているときは、良い感じに見え、温かさを感じ「癒されている」と感じます。しかし、いったんこの関係が崩れると、依存が高まり、再トラウマを起こすことにもなります。ひどい場合には犯罪を起こす原因にもなりますし、希死念慮などを誘発することにも繋がります。
では、どのような関係であればいいでしょうか?
「共にある」関係へ
望ましい関係は、「共にある」関係です。これは、それぞれの境界線を侵害せず、お互いを尊重することができる関係です。寄り添うことはあっても、混ざり合うことはありません。この関係では、インナーチャイルドも大人の自分も尊重されている状態なので、過度に依存する状態は生まれなくなります。
そして、大人の自分とインナーチャイルドが「共にある」関係でいることこそが、「大人の自分がインナーチャイルドを癒す」ことに繋がるのです。
次回は、この「共にある」関係を保ちながら、大人の自分がインナーチャイルドを癒していく核心に触れていきます。
信暁(2025年11月20日)