自分の中を知る
2025年05月14日 19:12
自分の中を知ることは、神秘的でもあり恐ろしくもあります。それは、今まで出会ったことのない自分自身に出会うこと、今まで目を背けてきた自分自身と向き合うことになるからです。
いざ、自分の中を知ろうと、頭で考えても決して自分を知ることはできないのです。なぜなら、頭で考えることは、情報を整理して原因を突き止め、それを解決するために過去の経験から結果を導き出そうとすることだからです。感情などは、表面的なものに触れるに留まり、決して奥深いところの感情には触れることはありません。
では、自分の中を知るためには、どこを見る必要があるのでしょうか。表面に見えている部分をいくら探しても、決して自分自身を探り当てることはできません。なぜなら、それは、表には出てきていないからです。
それなら、どうすれば自分の中を知ることができるのでしょうか。それは、自分自身のからだが教えてくれるのです。自分自身のからだを感じることから知ることができます。からだを感じることで、からだに刻まれた記憶を呼び起こすからです。なぜなら、自分自身が生きた証は、記憶と共にあり、その記憶が良くも悪くも自分自身を作っているからです。
私たちの記憶の中の楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと、辛いこと……などは、言葉にならない感覚として、からだに刻まれているのです。
ですから、自分を知るための近道は、頭で考えるのをやめて、からだで感じることです。マインドフルネスのように、聞こえてくる音に耳を傾けることから始め、呼吸に意識を向け、からだに意識を向け……というふうに順に意識を向けていくと、からだの感じを感じやすいと思います。
からだを感じていると、ふとした瞬間に、楽しい、嬉しいといったポジティブな感覚が出てくるかもしれません。反対に、辛い、苦しいといったネガティブな感覚が出てくるかもしれません。これらの感覚は、さらにからだの奥へと続く道しるべとなります。
ポジティブな感覚は、ワクワクするような感じと共に、喜びや楽しかった記憶の扉へと続きます。一方、ネガティブな感覚は、不安や恐れといった感じとともに、過去の苦しみや辛さを呼び起こす記憶の扉へと続きます。
この記憶の扉はたくさんあり、そのときの感覚によって違う扉が出てくるのです。そして、その扉を開くことこそが、「自分を知る」ということになるのです。
例えば、あなたが人間関係で悩んでいるとします。その時、からだの感覚を感じてみると、胸が締め付けられるような苦しさ、胃が重くなるような不安……などが感じられるかもしれません。そうしたからだの感覚に意識を向けることで、ネガティブな感覚への道が開かれます。
その感覚をゆっくりと感じていると、やがて一つの扉が出てきます。そして、その扉の前まで来ると、もう一人のあなた自身から声を掛けられます。
「本当に開けるの」「この扉を開けたら、今の自分が変わってしまうけどいいの」「今よりもっと苦しくなるから開けない方がいいよ」「どうなっても知らないからね」などの声が。
それらの声は、本当にあなたが自分自身を信頼しているのかどうかを試している声なのです。
あなたが、自分を信頼していれば、その声は聞こえず、この扉は自然と開かれるでしょう。しかし、もしその声が聞こえたなら、まだ自分の中に迷いや恐れがあるからかもしれません。
そんな時は、焦る必要はありません。無理に開けようとするのではなく、その感覚を留めておきましょう。道筋はできてしまったので、準備ができれば、すぐに戻ってくることはできます。本当にこの感覚に対して信頼ができたら、自然とこの扉は開かれます。そうすると、この人間関係の悩みの中にある本当の自分を知ることができるのです。
自分の中を知るということは、目の前の悩みを解決することだけでなく、今までの自分に変化を起こすことにも繋がります。今までの過去の自分との決別、もっと言うと、今まで自分を守ってくれていたものとの決別でもあります。
簡単に変化と言っていますが、この変化への恐れや戸惑いは誰にでもあることなのです。あって当然なのです。しかし、この変化を受け入れたとき、自分が今まで見ていた世界と全く違った世界が開けます。
からだの感覚を感じ、からだに刻まれた記憶を呼び覚まし、自分自身を信頼することによって記憶の扉を開け、自分の中を知ってください。それが、あなたの人生によい変化を起こしてくれるはずですから。
信暁(2025年5月14日)