とどまる、感じる、ひらく

気づくためには「安全の場」が必要

2025年08月29日 19:18

 前回のブログで、「『気づく』ためには安心して感情を感じられる『安全な場』が必要なのです」と書きました。今回は、その「安全の場」が必要なのかを掘り下げてみたいと思います。  

  

 「気づき」は感情によって生まれます。感情はとても繊細なので、まず安心して感情に触れられる場が必要なのです。感情は環境に左右されやすいのです。  

 たとえば、満員電車や殺伐とした職場、混雑した繁華街などでは、安心して感情に触れられないでしょう。反対に、静かな部屋や自然の中、信頼できる人といるときには、安心して感情に触れることが多くなるのではないでしょうか。  

  

 たとえば、職場で意見も言えず、常に緊張状態で過ごしているとしたらどうでしょう。そんな環境では、安心して感情に触れることは難しく、知らず知らずのうちに感情に蓋をして働いてしまいます。でも、蓋をしている間にも、感情は瞬間瞬間に湧き上がっているのです。なので、その感情に一日中翻弄された結果、仕事が終わるころには、なぜかぐったりして何もする気になれないということもしばしば起きることもあるでしょう。  

  

 では、外的環境を整えると感情に気づけるのでしょうか。実は、そんな単純なことではありません。なぜなら、感情は、自分の内面で起こることなので、自分の内側に「安全な場」がなければ、どんなに環境が整っていても、本当の感情には触れられないものなのです。

  

 たとえば、休日に自然の中で過ごしていても、ふと仕事のことが頭をよぎり、瞬時に嫌な気分に引き戻されることがあります。そして、頭と心が嫌な気分に占領され、仕事の時に感じていた様々な感情にも飲み込まれるのです。これは、からだは「今」にいても、頭と心が「過去」に引き戻されてしまっている状態だからです。

  

 こうした状態を防ぐためには、自分の内面が常に「いま・ここ」に居る状態で、自分の中に「安全な場」を築くことが大切です。外側の環境に無防備に反応すると過去に引き戻されてしまいます。「いま・ここ」に意識を戻すことができる「安全の場」があれば、過去の感情を今の自分の中に持ってきて受け止めることができます。それにより、落ち着いて自分の感情を見ることができます。 

  

 このことよって、過去に翻弄されることなく、「いま・ここ」での「安全の場」で整理された感情から「よく頑張っているね」「ゆっくり休んでもいいよ」と自分を癒すことができるようにもなります。そして、「分かってもらえた」という感覚が生まれ、心に余裕が生まれます。この自分で自分を癒すことも、「安全な場」には大事なことなのです。

 

  「安全な場」をしっかり作るためには、自分が心からホッとできるモノや場所を持つことが一層助けになります。たとえば、職場で辛くなったときにトイレの個室でお気に入りのマスコットを見る、心地よい場所をイメージするなど、ほんの小さな工夫でも「いま・ここ」に戻る助けになります。これは簡単ではありませんが、少しずつ訓練することで、確かな効果を感じられるようになります。 

 

 私もかつて過酷な職場で働いていた頃は、感情を押し殺して仕事に向かっていました。少ない休日の中海を見に出かけても、頭の中は仕事のことでいっぱいで、気分転換にはなりませんでした。今は、自宅という「安全な場」で「いま・ここ」に居ることができるようになり、感情にも気づきやすくなりました。  


 「安全な場」で「いま・ここ」に居ることが、自分の癒すことにも繋がり、自分の感情に気づく土台となります。そして、その「気づき」が、いつも言っているように本当の自分を見つめるきっかけとなっていきます。自分が、「なぜ嫌なことでも頑張ってしまうのだろう」、「なぜ苦しくても頑張ってしまうのだろう」、「なぜ癒しを必要としているのだろう」、といった深いところに気づけるようにもなってきます。

  

 だからこそ、感情に気づくためには、「いま・ここ」での「安全の場」が必要なのです。

  

信暁(2025年8月29日)