「変わりたい自分」と「変わりたくない自分」
2025年10月22日 10:45

「変わりたい」という願いに寄り添って
セッションをしていると、「今までの生きづらさからどうしても抜け出したい」「もうトラウマから解放されたい」という方々の思いがひしひしと伝わってきます。ですから、前回もお話ししたように、「『いま・ここ』にあるからだの感覚を丁寧に感じることで、その時の感情が出てきて、少しずつ凍っていたものが溶けていく」というプロセスに寄り添っていきます。
トラウマの影響が今も心に深く残っている方は、解離状態にあることが多く、「いま・ここ」に留まることが難しい場合が多いように感じます。そういった方は、無理に自分の内面を感じてしまうと、フラッシュバックが起き再トラウマになるので、自分の外側の感覚から始めていきます。
いずれにしても、一生懸命、頑張ってセッションを受けておられるので、確実に変化が見受けられます。
「変わりたい自分」と「変わりたくない自分」のせめぎ合い
セッションを受けている方すべてに言えることですが、ある時から「変わりたくないんじゃないか」と感じるような言動がセッションのときに出てきます。
それはどういうときに感じるかというと、「もう、私だいぶ変わってきたと思います」「最近、辛いと思うことが無くなってきたような感じがします」という言葉を発せられたときです。この言葉の裏には、「変わりたい自分」と「変わりたくない自分」がひしめき合っているのです。
なぜ、そういことが起きるかというと、変わる自分に対して恐れが出てくるからです。今までの自分から脱して変わりたいと思うからセッションに来ているのにもかかわらず、なぜ変わりたくない自分が出てくるのでしょうか。
変化の途中で立ち止まる理由
セッションを初めて1か月ぐらいすると、自分の変化を実感し始めます。変われることに嬉しくなり、どんどん新しい自分になろうと意欲が湧いてきます。
しかし、ある地点に差し掛かると、それまで順調だった変化がまるで嘘のように止まってしまうところがあるのです。
それは、もう一人の自分の「このまま変わって大丈夫なのか?」という声のせいです。聞こえる方もいるかもしれませんが、実際には心の声なので聞こえません。
それは、「変わりたくない自分」が発した声なのです。こんなことを言うと、「そんなことはない。私は本気で変わろうとしているんだから、そんなものはいない」と言われる方もいるかもしれません。しかし、誰の中にも存在しているのです。
未知への恐れが変化を止める
人間は、未知の部分には恐れを抱きます。今まで変わったことがないので、変わった自分を知らないために、恐れが顔を出したということなのです。
実際に、セッションを受けて変わっていく自分を受け入れているときは、今まで何かしら、心理の本を読む、セラピーを受ける、今ならチャットGPTに自分のことを相談するなどによって、ある程度「知っている世界」なので、安心してセッションを受けることができたのです。
しかし、ある地点から先は、未知の世界であるので、途端に恐れが顔を出します。そして、「このまま自分が変わっても大丈夫なのか?」という声によって、今までの決意が揺らいでしまうのです。
いったん決意が揺らぐと「変わらない自分」の声が大きくなってしまいます。そうなると、「今までの生きづらさからどうしても抜け出したい」「もうトラウマから解放されたい」という思いが無くなったかのように、「今のままでも何とかやっていけているし」「今さら変わっても何も変わらないし」というような結論を出して、自分を納得させてしまう方が多いのです。そのことを残念に思わずにいられません。
「変わりたくない自分」に感謝する
では、このようにならないためにどうすればいいのでしょうか。
まずは、今まで自分を守ってくれていた者に対して、感謝の気持ちで「ありがとう」と言ってみてください。
それにより、凍りついていたからだが溶け始めます。そこで「これから本当の意味で、自分に対しての癒しが始まるからね」と、やさしく力強く声を掛けてあげてください。
変化は優しさの中で起こる
しかし、「変わりたくない自分」は、自分の居場所が無くならないように必死で抵抗して、手を変え品を変え何回も出てきます。その時は、どうか狼狽えずに「ありがとう」と何回も唱えてください。
そうすれば、変化は自ずとやってきます。気がついたときには、以前とはまるで違う自分が、そこに居ることに気づくでしょう。周りからも、「最近、変わったね」と言われることも出てくると思います。
自分の居場所は「いま・ここ」にある
自分の居場所は、過去にはありません。「いま・ここ」にしかないのです。
変化は、無理に起こすものではありません。優しく自分に寄り添い続けたとき、自然と起こるものなのです。
どうか、あたたかい目ですべての自分を受け入れ、「いま・ここ」で生きている実感を味わってください。
あなたの中にも、「変わりたい自分」「変わりたくない自分」がいるかもしれません。
その両方に耳を傾けてみてください。
信暁(2025年10月22日)