とどまる、感じる、ひらく

原因と結果は一直線ではない

2026年01月09日 17:12

因果関係とは複雑で繊細なもの

 私たちは、日常生活の中で「原因と結果」を単純に一直線に結び付けて考えることが多いのではないでしょうか。例えば、「あの人の言葉が原因で落ち込んだ」「あの出来事が原因で自信を無くした」「この環境が原因で失敗した」などです。

確かに、直接の原因だけを考えるとその通りかもしれません。しかし、因果関係とはそのように単純なものではなく、もっと複雑で繊細なものです。

 この「原因」の背景には、過去の経験、からだの記憶、潜在意識にある想い、他人との距離感などさまざまなものが同時に働いています。


 例えば、「あの人の言葉が原因で落ち込んだ」という出来事を考えてみましょう。落ち込んだ本当の原因は、言葉そのものではなく、過去に似たような場面で感じた痛み、からだが覚えている緊張、自分は嫌われているという信念、相手の表情や相手との距離感などが重なって結果として現れているのです。こうして見ていくと、原因と結果は決して一直線ではないことがわかります。


表面的な原因探しでは限界が来る

 しかし、何か起きた時、私たちは「何が悪かったのだろう」と身近なところで原因探しをしてしまいがちです。

 「あの人はいつも私の気に障ることばかり言う」「あいつはいつもあんな態度だ」などと、相手や外側の何かのせいにすることもあるでしょうし、「私が何か悪いことを言ったのかな」「私は嫌われているのかな」「すべて私が悪いんだ」などと、自分を責めることで納得しようとしてしまう場合もあるでしょう。

 そして、このような考えから出てくる解決策は、周りの人に話を聞いてもらい、意見を求める、もしくは人間関係に関する本を読む、SNSで似たようなケースを探すといったようなものになるのではないでしょうか。

 しかし実際には、誰が悪いというわけではなく、「そういった事実があっただけ」ということなのです。


 そうは言っても、私たちは、目の前の問題(嫌な感覚や苦しい気持ちなど)から目を逸らすために、いろんなことをしようとします。相手が悪いと思ったなら、その人に関わらないようにするかもしれません。自分を責めているのであれば、自分を変えるためにさまざまな努力をします。例えば、「人と関わるときは言動に注意する」「自分を変えるために瞑想する」「日頃の考えを変えるためにポジティブなことを常に考える」「自分に優しくなるために一人の時間を増やす」など挙げればきりがないほどです。

 確かに、こういったことは効果があります。前向きに人生を歩みやすくもなります。一人でゆったりと過ごすようになると自分の変化も感じられます。私もやりました。本当に変われた自分が嬉しくて気持ちよく生活していました。ある時までは。


 それが、私が触れたくない学生の頃のことが、幾度となく重なって出てきたときには、前向きに人生を歩む考えだけではどうすることもできない限界に直面しました。


内面に向き合わざるを得なかった気づき

 その時気づいたのです。それは、過去の経験、からだの記憶、潜在意識にある想い、相手との距離感などを見ていかないと、自分は本当には変われないということを。そして、今まで降りかかってきた人間関係の問題は、自分の内面に気づかせるために起こっていたのだと。

 そこから私は、セッションやワークを通して自分の内面を見ることに徹しました。そうすると、忘れもしない過去が自分のからだに感覚として残っていること、潜在意識にある想いが自動思考となっていること、他人との境界線がなく自分のテリトリーに勝手に入られていたことなどが次々と明らかになっていきました。こういったことに気づいていくと、今まで蓋をして見ないようにしていたことにも気づき、一層苦しくなりました。

 しかし、少しずつ気づいたものを解放し癒していくと、今まで嫌で見たくなかった気持ちが、本当は思い込みでしかなかったこと、逆に、自分が気にも留めていなかったことが本当はトラウマであったことがわかり、自分の本質そのものがひっくり返された感じがしました。


 こういったことを続けていくうちに、あるとき自分が変わっているのに気づきました。あれほど変わろう変わろうと必死に思ってやっていたことが、気づけば自然と変わっていたのです。周りの景色も以前とは変わり広くなったように感じました。そして、人との関わり方や話し方、態度も変わり、笑顔が増えました。

 だからといって、嫌なことが無くなったというわけではありません。嫌なことは嫌として気づき感じることができるようになり、嫌なことに翻弄されることは無くなりました。


本当の原因は自分の内面にある

 こういったことからわかったことは、何か起こったことの結果を解決するために、表面的な原因だけに囚われるだけでは不十分だということでした。本来の原因とは、自分の過去の経験の記憶、からだの感覚、他人との境界線の有無や奥底に眠る感情など、どれも自分の内側にあるのです。

 原因と結果は、一直線に結び付けて考えられないのです。過去の経験、からだの記憶、潜在意識にある想い、他人との距離感などさまざまなものが複雑に働いています。だからこそ、結果に対して「ここを直せばいい」という一つの原因だけを見るのではなく、自分の内面というもう一つの原因も見ていくことが大切なのです。

 自分の内面にあるもう一つの原因に気づき見ていくことができれば、原因そのものが変化していきます。そして、原因が原因でなくなっていきます。そして内側の原因が変わるとき、あなたの人生の流れが確かに変わり始めます。


信暁(2026年1月9日)