母の呪縛からの解放④(劣等感マザー)
2024年05月10日 22:41
今回は、引き続き「母の呪縛からの解放」というテーマで、タイプⅣ・劣等感マザーについてお話しします。このタイプの母親は、子どもの頃、親や周りの大人から、兄弟や近所の子などと比較されることが多かったという特徴があります。あまり褒められたという経験がなく、「自分はダメな人間だ」と思い込んでいるのです。そのため,ありのままの自分を認めることができず,常に劣等感に悩まされ続けています。
(この記事は『母の呪縛から解放される方法』(タツコ・マーティン著、大和書房)を参考にしています。)
タイプⅣ:劣等感マザー
「自分は人よりも劣っている」という意識が強い母親。常に自分と相手を比較し,周りを見下すことで自分が優位に立とうとする。このタイプの母親に育てらると、子ども自身も劣等感が強くなる。
《劣等感マザーの口ぐせ》
・あんたは本当にダメな人間ね。
・なんでそんなに気が利かないの。
・私のことをバカにしているでしょ?
・あの人には絶対に負けたくない。
《劣等感マザーに育てられた子どもの特徴》
・将来のことを考えると暗い気持ちになる。
・いつも人と比べては落ち込む。
・ゴシップ大好き,人の悪口を言うのが楽しい。
・弱みに付け込まれることが多い。
劣等感マザーに育てられた子どもが、「自分の母親は劣等感を持っていたのだ」ということに気づき、そのことで生きづらくなるのは、大人になりいろいろな年代の人と接するようになってからが多いようです。学生のときには、母親より自分のことで精一杯なので「自分はなんか人と違うなぁ」ぐらいにしか思わないことの方が多いでしょう。
社会に出て仕事をするようになり、他人と比べること、社会全体の中での自分の立ち位置などがわかってきて、初めて劣等感を持っている母親のことに気づく人もいます。中には、結婚してから子どもを介して気づく人もいます。
しかし、一番多いのは、親が高齢になり子どもが世話をしなければならなくなったときです。そのときに、母親から上記のような口ぐせが出てきます。それを聞いて、子どもは上記のような特徴が出てくることが多いのです。「どうしてこういう母親なのか」と考えたりすることも自然と多くなり、自分のことも見つめることも増えてきます。そうしたときに、自分の生い立ちについても考え、自分の今の現状と過去に描いていた理想の自分像とのギャップに落ち込み、自分を卑下する人もいます。「今さら自分の人生どうすることもできない」と諦める人もいます。
なぜ「どうすることもできない」と思ってしまうのか。それには、今さら変わりたくないと思っている部分もあるでしょう。今まで自分自身を蔑ろにして生きてきたことに気づかされるのが怖いというのもあるでしょう。しかし、このまま人生を終わりたくないと思っている部分が少しでもあるなら、自分というものを見つめ直し、自分のことを見てあげ、わかってあげることで、変わることができます。
今の自分(大人の自分)が、過去の自分(子どものときの自分)のことを受け入れてあげることで変われます。まずは、過去の子どものときの自分の感覚を「いま、ここ」という状態で、今の自分の感覚として感じてみましょう。そのときの感覚から、悲しみ、寂しさ、怒り、悔しさなど、いろいろな感情が出てくるかもしれません。どんな感覚、どんな感情が出てきても、それを丸ごと受け止めるのです。大人の自分が子どもの自分を抱きしめてあげるのです。そうすることで、過去の自分が癒やされ、自分の内面から変化が訪れます。これが、私たちが行っているマインドフルネスになる中で展開していくことのひとつです。
子どもの自分が出てきたとき、常に、大人の自分が受け止めてあげる、抱きしめてあげる、そうすることによってコンパッション(思いやり)が生まれます。これが、セルフコンパッションです。
自分自身に対して思いやることができて初めて母親から解放されるのです。
次回は、タイプⅤ(建て前マザー)です。
信暁(2024年5月10日)