とどまる、感じる、ひらく

ナロちゃんが行方不明

2024年05月13日 19:40

 土曜日に双子ガールズ(5歳)が遊びに来た。かくれんぼして、ワンちゃんごっこ(私は飼い主)して、サンドイッチ作って食べて、公園行って、おやつ食べて、お絵描きして……、夕方娘が迎えに来て、3人で帰っていった。


 ちびっこギャングたちが去って、やれやれと休んでいたら、娘から電話。さーちゃん(双子姉)が駅までの途中に寄ったコンビニのトイレに、リュックサックを忘れてきたみたいとのこと。コンビニじゃなかったら、駅でもトイレに寄ったから、どっちかだと思うというので、まずはコンビニに電話してみるが繋がらない。次に駅に電話したら、トイレを見てくれて、それらしいものはありませんと言われる。お礼を言って電話を切って、コンビニに急ぐ。


 コンビニのトイレに入ってみると、きれいに片付いていて、リュックサックはない。店員さんに聞いてみると、あっさり「ありませんね」と言われる。事務所の中とか見てくれないのかなと思うが、ないと言われてしまったので、仕方なく娘に電話する。ほかに心当たりがあったら探してみようと思ったのだが、本人はコンビニのトイレの荷物置用の台の上に置いたと言っていて、娘も、思い返すと、駅に着く前にすでにリュックをしょってなかったような気がすると言う。そう言われてしまうと探す当てがなくなり、すごすご家に帰る。


 リュック(本人お気に入りの恐竜柄)の中身は、公園で拾った小枝、恐竜の人形3体、ペンギンの赤ちゃんのぬいぐるみ2つ、犬のぬいぐるみ2匹(1匹はミニチュアダックス、もう1匹はトイプードルで、なぜかどちらも名前はナロちゃん)、お絵描きした絵その他諸々。どれもふたりのお気に入りで、とくにナロちゃんたちは私が誕生日に贈ってからずっと可愛がってくれていた。


 はて、ぬいぐるみとかしか入っていない子ども用リュクサックを持ってちゃう人なんているんだろうか?と思うのだが、ぬいぐるみも売れるし、とりあえず持って行って、中身を確かめて要らなかったら捨てるとか……などと夫が言うので、何とも言えない気持ちになる。

 起きてしまったことはしょうがないと思いつつも、娘は自分を責めるし、ガールズは悲しみの大号泣だそうだしで、私の気持ちも落ち着かないまま、その日はくたびれて倒れるように寝てしまった。


 翌日は、前日の余韻が残る何とも重苦しい気持ちのまま、朝を迎えた。布団の中であれこれ思いを巡らしていたのだが……このまま見つからなかったら、子どもたちは、置き忘れたリュックはどうなったのか母親に聞くだろうな、どんなふうに答えたとしても、他人の物を持って行ってしまう人がいるとか、他人の物をいたずら半分に捨てちゃうような人がいるとか、そういう悪い人がいるから気をつけなくちゃいけないとか、そんなふうに思ったりするかもしれない……。そう考えたとき、子どもたちの世界を、「悪い人がいる世界」にしたくない! そう強く思った。


 頭の中でリュックサックを思い描いてみたら、とてもはっきりとリュックサックが見えた。だから、起きてすぐ、その頭の中のリュックサックを確認しながら、もう一度コンビニに出かけてみた。念のためコンビニの駐車場の隅や茂みの中などもひと通り見て、それからコンビニに入っていった。

 昨日とは違う店員さんがいたので、事情を話すと、すぐに事務所の中を確認して、「どんなリュックですか?」と聞いてくれたので、「青くて恐竜の柄で……」と説明すると、ちゃんとそのリュックが出てきた。事務所から出てきたもう一人の店員さんに「ああ、よかったですね」と言われ、ありがとうございます、ありがとうございますと言いながら、リュックを抱えて店の外に出て、すぐに娘に電話した。


 世の中には悪い人がいるから、気をつけなくちゃいけないと繰り返し聞かされたり、自分でもそう思ったりしていると、世界は、ほんとうに悪い人がいる世界のように見えてしまう。ほんとは悪い人も善い人もいないのに……。

子どもたちには、できるだけありのままの世界を見ていて欲しい。そんなことを初めて強く感じた出来事だった。


 午後に、娘とさーちゃんがリュックを取りに来た。「どこにあった?」とさーちゃんが聞くので、「コンビニ。もう1回行って、店員さんに聞いたら、ちゃんと取っててくれて、渡してくれたよ」と答えると、ほっとしたような表情で、しっかりリュックをしょって帰っていった。

ナロちゃんたち、無事におうちに帰れてよかったね!



ゆり(2024年5月13日)