とどまる、感じる、ひらく

母親の呪縛からの解放⑤(建て前マザー)

2024年05月16日 11:57

 今回は、引き続き「母の呪縛からの解放」というテーマで、タイプⅤ・建て前マザーについてお話しします。このタイプの母親は、いつも周りにばかり気を取られ、常に世間体を気にしています。

(この記事は『母の呪縛から解放される方法』(タツコ・マーティン著、大和書房)を参考にしています。)


タイプⅤ:建て前マザー

 世間体をとにかく気にする母親です。外から理想的な家庭に見えても、実は外側だけをよく見せようとします。愛情の通わない家に育った人も多いです。

 周りにどう思われるかで自分の価値が決まるので、外見やステイタスをとても気にします。いつも人の目を気にしているので外づらはいいのですが、無理をしている分、内づらが悪く、家族や子どもには気分次第で当たることもあります。


《建て前マザーの口ぐせ》

・みっともないから○○しないで。

・そんなことしたら、世間様に笑われる。

・周りから嫌われないようにしなさい。

・恥ずかしいから○○はやめてちょうだい。


《建て前マザーに育てられた子どもの特徴》

・何かするとき、まずは「人にどう思われるか」を考える。

・ブランド品が好き。

・洋服や髪型が気に入らない日は外に出たくない。


 私の母親もこのタイプが強い人でした。私の小さい頃は、「みっともないからやめなさい」というのが口ぐせでした。躾に厳しく、「あんたがしっかりしないと世間から親が笑われる」としょっちゅう言っていました。自分は子どもですから、「みっともなくないように、親に迷惑を掛けてはいけない」と思い、必死に親の言うことを聞いていました。子どものときはわからなかったのですが、「みっともないことをするな」と言われていたので、「恥ずかしい」という感覚も植え付けられていました。


 大人になっても、母親がいつまでも同じようなことを言い続けるのに辟易していました。仕事をするようになってからは、子どものときと違い、家にいる時間が減ったのですが、顔を合わせるといろいろ口出ししてきます。そんなときは、「子どもじゃないから、かまわんといて」と言っていました。何を言われても自分の感情を押し殺して、放っておけばいいと思っていました。しかし、過去に受けた嫌な気持ちは消えるどころか、どんどん増していきました。


 ひとり暮らしをするようになり、親から離れたことで子どものときからの嫌な気持ちが消えるかと思ったら、そんなことはありませんでした。子どものときからの気持ちは、「恥ずかしい」という感覚と一緒に慢性トラウマとして自分の身体に残っていました。(これは、マインドフルネスセッションをして初めてわかったことです。)

 何をしても人の目が気になり、人からどう思われるかということばかりが気になっていました。そして、こんなふうに人の目が気になるのは、自分が弱いからなのだと思っていました。しかし、現実は、子どものときからのトラウマでした。

 トラウマというと、事故や災害に遭った際のPTSDを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、それだけではなく、私のような場合は、発達性トラウマの一種です。

 だからトラウマになった感覚は、ひとりで解消しようとしても無理でした。このような状態のとき、手塚郁恵さんが始めたNPOマイセラジャパンを知り、マインドフルネスセッションやワークを2年間受けました。

 マインドフルネスにより、本来子どもとして持っている失われた感覚を取り戻し、慢性トラウマを解消していきました。


 慢性トラウマを抱えていると、大人の今の自分の感覚と子どものときに受けたトラウマ体験の感覚が、ごちゃ混ぜになっています。まずは、「この2つの感覚がある」ということに気づくことが大切です。からだに残っている感覚を丁寧に見ていくことによって、その2つの感覚に気づいていきます。気づいた感覚を、繰り返し感じていくことで、からだに変化が訪れます。このようにして、トラウマは解放されていくのです。


 親から発せられる何気ない一言(私の場合のように、躾という名目によるものもたくさんあります)により、子どもはトラウマになってしまうのです。発達性トラウマは、親とりわけ母親からの影響が大きいのです。

 発達性トラウマを受けて育ってきたにもかかわらず、それがトラウマだと認識することなく、今もなお苦しんで生活している方はたくさんいます。そんな方たちに、少しでも気づきが起こればいいな……と私は思っています。

 この苦しみは、決して表面の自分が変われば脱することができるといった類の苦しみではありません。表面を変えて、一時的には変わった気になっても、いずれこの苦しみは再度やってきます。自分の内面が変わらない限り、この苦しみは終わらないのです。


 母親からの呪縛で苦しんでいる方の一助となりますように。


 次回は、タイプⅥ(欲求不満マザー)です。


 信暁(2024年5月16日)