母の呪縛からの解放⑥(欲求不満マザー)
2024年05月19日 15:47
今回は、引き続き「母の呪縛からの解放」というテーマで、タイプⅥ・欲求不満マザーについてお話しします。このタイプの母親は、自分の欲求が満たされていないので、常に不平不満が絶えず、グチを延々と言い続けたりします。
(この記事は『母の呪縛から解放される方法』(タツコ・マーティン著、大和書房)を参考にしています。)
タイプⅥ :欲求不満マザー
気が弱く、やりたいことがあっても自分の意志を通せなかったり、環境に流されてあきらめてしまったりすることが多く、それが不平不満の種となっています。
うつ気味で、いつも文句を言っているので、この人のそばにいるとエネルギーを吸いとられてしまうことも多々あります。
このタイプの母親は、周りからの圧力に勝てず、「ノー」と言えずに自分を二の次にしてしまうので、自分がどうしたいのかを見失いがちです。
《欲求不満マザーの口ぐせ》
・あ~あ、疲れた。もうやってられないわ。
・あなたがいなかったら、お父さんとはとうに離婚していたわ。
・本当は○○の仕事がしたかったのに……。
・私の人生ていったい何なの?
《欲求不満マザーに育てられた子どもの特徴》
・自分の望みや夢をすぐあきらめる。
・人から頼まれると断れない。
・相手のいい部分よりも、嫌な部分ばかりに目が行ってしまう。
・気がつくとグチを言っていることがある。
欲求不満マザーは、何しろグチが多いのが特徴です。お姑さんのグチ、仕事場でのグチ、テレビを見ているときのグチなど、口を開ければグチを言っています。自分は、世の中で一番不幸であると思っている感じがあります。
こういった母親の言うことを聞いていると、「世の中は理不尽なことばかりで何も良いことがない」といった考えが子どもの中で芽生え、植え付けられてしまいます。
一般的に子どもは、母親が大好きで見捨てられたくないと思っていますので、成長とともにどんどん母親の言うことに同調していきます。そうなると、母親は、「この子だけが私のことを理解してくれている」と思い、今度は、子どもに対する要求が増えてきます。子どもは、「可哀そうなお母さんが私を頼ってきてくれている」「私がお母さんを助けなきゃ」と無意識に思い、自分のことは二の次で母親の要求を呑んでしまいます。
大人になり、母親が自分でできそうなことを頼んできたとき、「自分でやって」と言ったりすると、こういう母親は、「あなたまで私のことを見捨てるの」「昔は素直でいい子だったのに」というふうなことを言います。そうすると、母親に上手く利用されていると薄々感じていても、罪悪感を感じてしまい、「ついついしてあげる」ということになってしまいます。
こういったことは、母親が子どものパーソナリティを侵害することに繋がります。子ども自身のパーソナリティが侵害され続けると、他人との境界が上手く築けなくなります。他人との間に境界がなければ、他人の言動に翻弄されてしまいます。自分が何かをしていても、他人から「こっちの方がいいよ」と言われると、すぐに考えを変えたり、自分のやっていることに自信が持てなくなったりということが起こってきます。自分の夢を持っていても、すぐに諦めてしまうとはこういうことです。
他人に何か頼まれると「断ると悪い」と思ってしまうのは、母親に頼みごとをされたときの罪悪感を植え付けられた結果なのです。
子どものときからグチを聞かされ続けてきたため、自分が友達と話をするときもグチが多くなってきます。他人の嫌な部分も自然と目についてしまいます。
こういったことは、人間関係で苦しむことにも繋がります。「どうして自分は何も悪いことをしていないのに嫌われるのか」「どうして一人ぼっちになってしまうのか」などで悩みがある人は、他人との境界があやふやになっていることからこうした問題が生じていることが多いです。一度、自分のパーソナリティがしっかり確立されているか、他人との間に適切な境界線を引けているかを考えてみてください。
もし、自分のパーソナリティが確立されていないのであれば、家族関係でどうであったかを思い出してみてください。そして、関係性の中で、自分が覚えている出来事を思い出してみるのです。そして、そのとき感じていたであろう自分の感覚を、からだで感じてみるのです。それを続けていくと、「自分のパーソナリティはこういうふうにして侵害されたのか」ということがわかってきます。あとは、パーソナリティを再確立するだけです。
パーソナリティの再確立で大事なことは、じぶんの気持ち、感覚に正直になるということです。正直になるということは、思ったことをそのまま出すということではありません。他人との関係では、出せないこともあるでしょう。しかし、正直に感じて、「今は出すときじゃないね」と心の中で自分に言ってあげることはできます。
そして、最後にもう一つ一番大事なこととして、自分自身をしっかり認識するということです。長い間、自分のパーソナリティが侵害され続けてきた結果として、自分自身が「ここにしっかりいる」という感覚があやふやになっているのです。だから、自分自身を頭から肩、両腕から手のひら、胸、背中、お腹から両足にかけてしっかりつかむように時間を掛けて触っていくのです。そうすることにより、自分が今の瞬間「ここにいる」ということがしっかり認識されます。自分が、他人に翻弄されそうなとき、両腕だけでもしっかりつかむことで翻弄されにくくなってきます。
こういったことを繰り返していけば、自分のパーソナリティが確立されるだけでなく、人間関係も改善されていくのです。
欲求不満マザーはグチを言うだけでなく、子どものパーソナリティまで侵害してしまいます。パーソナリティを侵害され続ければ、いずれ親子関係は「共依存」の関係になってしまいます。そうなる前に、自分のパーソナリティを再確立してください。自分のエネルギーを吸い取る「エネルギー・バンパイア」に負けないように……。
次回は、タイプⅦ(未熟マザー)です。
信暁(2024年5月19日)