母の呪縛からの解放Ⅶ(未熟マザー)
2024年05月23日 22:10
今回は、引き続き「母の呪縛からの解放」というテーマで、タイプⅦ・未熟マザーについてお話しします。このタイプの母親は、精神的に子どものまま、成長せずに大人になった母親です。子どものように自己中心的でわがままなところがあり、「欲しいものは欲しい」「やりたいことはやりたい」とまさにわがままな子どものような態度をとることが特徴です。
(この記事は『母の呪縛から解放される方法』(タツコ・マーティン著、大和書房)を参考にしています。)
タイプⅧ :未熟マザー
人間は、成長過程の一つとして、子どもの頃に自己中心的な時期を通ります。愛情豊かな親に育てられた子どもは、無事にこの自己中心的過程を卒業して、相手の立場に立ってものごとを考えられる過程へと成長していきます。
しかし、家庭内に暴力があるなどのネガティブな環境で育った子どもは、自己中心的過程に留まり、そこで成長が止まってしまいます。肉体的には大人になっても、何でも自分中心にしか考えられない人間になってしまいます。 相手の立場になれないので、人間関係のトラブルが多いのが特徴です。
《未熟マザーの口ぐせ》
・そんなこと言われても困っちゃうわ。
・お母さんの気持ちもわかってよ。
・なんで我慢しなくちゃいけないの?
・そんなことぐらいで怒ってるの?(相手の立場になって考えられないので、人前で子どもに恥をかかせたり悲しませるようなことをしても、子どもが傷ついたなどとは思いもしない)
《未熟マザーに育てられた子どもの特徴》
・人に相談を受けても、いつのまにか自分の話になっている。
・経済的なことを考えず、欲しいものがあるとつい買ってしまう。
・相手の気持ちがまったくわからない。
・子どもにどう接すればいいかわからず、何年たっても愛情が湧かない。
未熟マザーは、感情で相手を振り回すことが多いです。子どもが小さいときは、精神的な年齢が子どもと近いため、子どもと違和感なく接することができます。世間からは、子煩悩と見られるときもあります。しかし、子どもが成長するにつれ、子どもの要求よりも自分の要求のほうが強くなってきます。母親が頼みごとをして、子どもが「イヤ」と言うと、「あんたはわがまま過ぎる」「子供は親の言うことを聞くのが当たり前」などと言うため、子どもは母親の言うことをどうしても聞かざるを得なくなります。そのうち知らず知らずに、子どもは親の言いなりになってしまい、そして子どもが親の面倒を見させられるということも少なくありません。
甘やかされて育った母親や、前回の欲求不満マザーなどにもこの傾向が見られます。
これまで母親のタイプを述べてきましたが、母親のタイプが1つだけということはあまりなく、いくつかのタイプが合わさって母親の人格を形成している場合が多いです。その中で、余程未熟で子どもっぽい人でない限り、未熟マザーは他のタイプに隠れてしまっていることは少なくありません。しかし、この未熟マザータイプが如実に表れてくるのは、母親が高齢になったときが多いのです。
以前、私の職場にいたある女性は、はじめの頃は未熟マザーのような感じではありませんでした。しかし、しだいに高齢になってくると、日頃自分の好き勝手なことをしておいて、困ったら「私ばかりを責めないでよ」「私のこともわかってよ」などと言うようになってきました。自分が、好き勝手なことをしているということ、どうしてそれをしてはいけないのかということが、見えていないのです。順序立てて説明しても、まったく他人事のように聞き流し、「私ばかり責めないで」「私のこともわかって」と言うばかりで、その後ケロッとしているのです。
その人の子どもは、未熟マザーに育てられた子どもの特徴があり、話をしていても自分の話にすぐ切り替える、何か欲しいものがあるとすぐ買ってしまう、相手の気持ちがわからず暴言を吐くという感じでした。
もし自分の母親が高齢で、同じような様子が見られるなら、未熟マザーかもしれないと疑ってみるといいと思います。自分が、未熟マザーに育てられたと感じ、人間関係で悩んでいるならば、他人との関係性を思い返してみるといいでしょう。
自分が人の話を取って自分のことばかり話していないか、自分から人と約束したのにそれを破っていないか、人の気持ちも考えず思ったことを相手にズケズケと言っていないか、「誰も私をわかってくれない」と思っていないかなどです。こういったことが自分の中にあれば、自分も大人になり切れていないということになります。だからといって、自分を卑下しなくていいのです。母親の未熟さがわからずに未熟な母親に育てられ、未熟なまま育ってしまったというだけなのですから。
大人の自分になるためには、実家で一緒に住んでいようといるまいと、まずは自分の母親から距離を取ることです。そして、母親から何を言われても無視することを選ぶのです。おそらく「この親不孝者」「私を見捨てる気か」「私をのけ者にして邪魔者扱いしてる」などいろいろなことを言われると思います。しかし、考えてみてください。自分は子どものときから長い年月、親から不条理なことを言われたりされたりしてきたのです。成長する過程で苦しめられてきたのです。親が高齢になって寂しいからと言っても知らぬ顔をしておけばいいのです。
それよりも、自分が親にされたことをしっかり振り返り、嫌だったこと、腹が立ったこと、悲しかったこと、寂しかったことを思い出したら、その感覚をしっかり感じることが必要です。そのとき、恨む気持ちが出てきたならば、しっかり恨むことをすることです。中途半端なことはせず、恨んで殺したい気持ちが出てくればしっかりそれを感じることです。感じるだけで飽き足らなければ、夢の中で何回も殺すことです。中途半端にするならこの方法は止めてください。中途半端にすると本当にしたくなる気持ちが出る場合があるからです。とことんやると、絶対自分の中で昇華されます。
なぜ、このように言えるのかというと、私自身が実際に行った方法だからです。
夢の中なら罪には問われません。誰にも非難されません。本気で感じた感覚は、手放すことができます。そうして、初めて未熟な親でも親として見ることができるのです。なぜなら、自分が未熟でなくなり、大人の自分として、未熟な親を見ることができるからです。
自分を解放させる方法は、親を変えることではないのです。自分を変えることは、自分にしかできません。大人の自分が、子どもの自分をしっかり包み込んであげ、理解してあげることから始まります。自分自身にセルフコンパッションするのです。
自分が大人になるということは、自分の内面を変えることでしかできないのです。
次回は、タイプⅧ、「オールドファッションマザー」です。
信暁(2024年5月23日)