「いま、ここ」は難しくない
2024年07月18日 19:17
マインドフルネスにおいて「いま、ここ」に意識を向けるとき、難しいと思うことも少なくないのではないでしょうか。なぜ難しく感じてしまうかというと、日常生活のなかで「いま、ここ」に意識を向けることは、ほとんどないと思っているからでしょう。仕事をするときなどは、いろいろなことに目配りをしないといけない、次のことを考えながら段取りをしないといけないなど、意識を向けるところが多いのは確かです。それは、人間には言語と思考を使う能力があるためにそうなってしまうのだと思います。
大人は、どうしても言語と思考に頼ってしまいます。「幼児の感覚とマインドフルネス」の記事でも書いたように、幼児の世界には「いま、ここ」というものしかないのです。「いま、ここ」でやっていることがすべてなのです。だから、遊びでも何でも没頭するのです。
大人も幼児の感覚を感じられるときがあります。それは、自分の趣味などに没頭しているときです。没頭しているときは、「いま、ここ」という世界に居ます。何かを作っているときは、出来上がったところを思い浮かべ、未来に意識がいっているときはあるでしょうが、作っているものに意識が向いているときは「いま、ここ」に居るのです。人は、好きなことをしているとき、「いま、ここ」の感覚で没頭しています。
私は、好きなことはないし、趣味もなく打ち込めるものが何もないという人もいるかもしれません。安心してください。誰もが毎日の生活のなかで、この「いま、ここ」の感覚を感じているのです。一日のうち一瞬も感じていない人はいないと思います。
どういうことかというと、例えば、通勤や通学途中に電車やバスを利用するとします。電車やバスを待っているときは、「まだかな?」と未来に意識が向いたり、「いつもならもう来るはずなのに」などと過去に意識が向いたりしています。けれども、電車(バス)が「見えた!」、あるいは「来た!」とわかった瞬間には、「いま、ここ」を感じているのです。
別の例では、テレビを見ているとき、好きな俳優やタレントが出る番組があるとします。その人が出てくるまでは、「いつ出てくるかな?」と未来に意識がいっていますが、出てきた瞬間は「うれしい!」という感情とともに「出てきた!」と「いま、ここ」を感じているのです。だから、「いま、ここ」という感覚がわからなければ、日頃の生活を思い浮かべれば、こういった瞬間の「いま、ここ」をけっこう感じていることに気づくでしょう。
「いま、ここ」というのは、一瞬一瞬の点でしかないのです。マインドフルネスは、この一瞬一瞬に気づいていることなのです。
マインドフルネスをするときは、その前に、幼児が居られる家では、子どもさんが遊んでいるときのことを想像してみる、その他の人ならば、日頃の一瞬の出来事を思い浮かべてみてからすると、「いま、ここ」の感じがつかめるのではないでしょうか。
「いま、ここ」という感覚は、実はそんなに難しいことではないんですよね。
信暁(2024年7月18日)