親子の関係って何なの?!
2024年07月23日 18:17
先日、母と電話で話したとき、私の母親は本当にコントロールマザーであったとつくづく思いました。人に話を振っておきながらすぐに自分の話にもっていく、自分がどれだけ子どもたちにいろいろなことをしてきたかを繰り返し話す、マウントをとるなど、こっちがもう辟易して呆れるくらい気持ちよさそうに話をしていました。
そこで、ひとつ疑問が出てきました。それは、親子の関係っていったい何なのだろうと。
「親子の関係」というワードで、ネットで検索してみると、「夫婦とともに、家族を構成するもっとも基礎的な人間関係である。もとより、親子は愛情と信頼の感情で強く結ばれること」と書いてありました。よくわかりません。
愛情というものは、諸刃の剣で、親が愛情を注いでいると思っても、子どもには迷惑な場合もあり、愛情が空回りする場合もあります。親が子どものテリトリーを侵害して行う愛情は、親の独りよがりの愛情でしかないのです。物心つく前から侵害された独りよがりな愛情を注がれてきた子どもは、思春期を過ぎ自立してからも「親はいつまでもうるさい存在」としか思えないのです。このような親の場合は、テリトリーを侵害して愛情を注ぐくらいですから、当然信頼もありません。
親子の間に愛情があったのか、信頼があったのかは、親が年を取り、子どもが成熟したときにわかるものではないかと思います。私は、リハビリの仕事をしているとき、高齢者に携わっていることが多かったので、高齢者の方が自分の親子関係について話されるのを聞くことがありました。
ある方は、「あの子は子どものときからよく頑張ってきたから、あの子には迷惑をかけられない」「子どもの生活に迷惑をかけたくない」などと言っておられました。その一方で、「子どもにあれだけしてやったのに」とか「あれだけお金をかけてやったのに、何もしてくれない」などと言う方もおられました。
前者の方は、「私が何も言わないのに、突然家に帰ってきていろいろ出来ないこともやってもらって助かっている」と優しい口調で有難いということを強調しておられました。一方、後者の方はというと、「私は一人で生活しているのに、子どもは、心配して電話を寄こすということすらしない」とか「私は、昔、あの子にどれだけお金を出してやったか」などと言いながら怒っておられるのです。
言葉だけでなく、表情も前者の方はやわらかい優しい感じで、後者の方は、目が少し吊り上がり怖い感じがありました。
前者の方の場合、子どもに何をするというわけではなくても、子どもの成長とともに、子どもをしっかりみてこられたのだと思います。後者の方の場合は、子どもをみるというよりも、子どもに「これだけ手を掛けてあげた」「これだけやってあげた」という感じが強く、その裏には「だから、年を取ったら私がやってもらうのは当たり前」「親孝行するのが当然」という気持ちがあるのだろうと思います。前者の方は、子どものテリトリーを侵害することなく愛情を注いでこられ、後者の方は、子どものテリトリーを侵害して愛情を注いでこられたのだろうと予想がつきます。
人間は、感覚の生き物ですから、このような感覚は、赤ちゃんのときから言葉でなくても受け取ってしまいます。こういったことは、子どもが成熟すると、気づいてしまうのでしょう。私自身にしても、親に対して優しくしようとする思いよりも先に、過去のことが思い出され、無意識の中で反抗する態度が出てしまいます。ですから、後者の方のお子さんも私と同じような感じで、親を避けてしまうのではないかと思います。
私の知り合いで、自分の子どもとうまく付き合っているように見える人がいます。その人に「親子とは何だと思うか」と聞いたところ、「親子は一番身近な他人」、「他の人より縁が深いけどただそれだけ」と言われました。他の人より縁が深く、一緒にいる時間も長いので、よその子よりも「可愛い」と思うこともあるが、ただそれだけであるということです。
それとは逆に、自分の子どもを自分の所有物であるかのように錯覚し、「自分と子どもとは強い絆で結ばれている」と勘違いすることで、「子どもにはこうするべき」や「子どもは親に対してこうあるべき」といった歪みが起きて、自然な関係が維持できないということが起こってくるのではないでしょうか。
親子という関係は、生まれてから一番身近な存在として成り立っているので、どうしても必要以上に相手のテリトリーに入ってしまいがちです。そうすることにより、無意識に「親だから」と子どもに愛情を無理強いしていることも考えられます。そうなると、たとえ周りからはよい親子関係に見えていたとしても、いつか破綻するでしょう。親が高齢になったとき、子どもが親のはき違えた愛情に無意識のところで気づくことによって、親への対応がぞんざいとなり、「親に電話をしない」「親に何かをしてあげたいと思えない」などとなってしまうのかもしれません。
「困っている親を助けたい、支えたい」と思えるような関係になるためには、子どものときに親が愛情をはき違えないことが大事なのではないでしょうか。
親子の関係とは、「親子は一番身近な他人」であることを認識し、「他の人より縁が深いだけ」ということに尽きると思います。そう思うことで子どもを一人の人間として尊重し見守ることができるのだと思います。親も子も一人の個の人間ですから。
信暁(2024年7月23日)