「良い・悪い」
2024年09月18日 19:51
生まれたばかりの赤ん坊は、目の前のことに一生懸命で、すべてのことに対して自分の考えや判断など何もありません。それが、歩けるようになり話ができるようになると、その親たちが自分の考えや価値観のもとに、子どもを躾けるようになります。そうすると子どもは、親の考えや価値観を、それが良いか悪いかなど関係なしに受け取り、いつしか自分の考えや判断として表現し始めます。その考えや価値観が生きていく上での自分の礎となっていくのです。
子どもが就学する頃には、いろんな人と関わるようになり、その中で他人の考えと自分の考えを照らし合わせ、選択しながら自分の考えや価値観がより築かれていきます。自分が選択した考えが親と同じならいいのですが、違う場合、その子どもの考えや価値観が親に受け入れられないときがあります。そして、無理に親が「自分の考えや価値観は正しい」と子どもに思わせようとしたりします。親が自分の考えや価値観に囚われすぎているとき、言い換えると執着しているとき、子どもが違う考えや価値観を持つことを受け入れられないからです。
そうなると子どもは自分の考えが悪いように思ってしまいます。自分だけが変わっていると思い、一生懸命親の考えに合わせようとしてしまいます。
なぜ親が子どもの考えや価値観を受け入れられないのかと考えると、自分の考えや価値観は良い、他の人の考えや価値観は悪いと線引きをしているからかもしれません。そしてその奥には、受け入れてしまうと自分が今まで生きてきた価値観を否定され、自分自身が否定されたような気持ちになってしまうということがあるのではないかと思います。
私の場合、親からの躾で「食べ物を粗末にするな。出されたものはすべて食べろ」と教えられました。だから、どんな時であっても出されたものは残さず食べ、それを他の人に強要することもありました。大人になってからも、「食べ物を粗末にする人は人間じゃない」みたいな感じで、一緒にご飯を食べに行っても「残す人とは二度と一緒にご飯を食べに行かない」ということもありました。
でも、ある時友達と話をしていて、「食べられないのなら、自分が食べてあげたらいいのに」と助言を受けました。そのとき初めて「そんな考えもあるのか」と思いました。よく考えると彼女とかの場合は、食べてあげることで、自分が相手に対して嫌な感情は湧かないし、2人ともが気分よく食事を終えることができるのです。
このことがあってから、今まで自分が親から教えられてきた考え・価値観を見直しました。そうすると親が、自分だけの一方的な考えや価値観で言っていたことが多々ありました。さらに親には、「子どもはこうあるべき」「私の気に入ったようにしない子は悪い子」という考えがあったようです。今思い出すと、親が良いと思っていることを自分がすれば褒められ、親が良いと思っていることを自分がしなければ、悪いと判断を下されていたことも思い出しました。
相手のすることを「良い・悪い」の観点からみると、どうしてもどちらかに判断しようとする心が出てきます。当然、自分と考えや価値観が違うときには「悪い」と判断を下しがちです。
他人と考えや価値観が異なっているのは当たり前であるのに、自分の考えや価値観に執着してしまい、それを他人にも押し付けるようなことをしてしまっているときには、一度その考えはどこから来ているのかを真剣に考えてみるのもいいかもしれません。
それにより、自分の考えや価値観が親(または自分より権威のある誰かなど)からの押し付けであったとわかれば、それを手放し、「良い・悪い」の観点から見ることもなくなっていくでしょう。
すべての人は、それぞれ違った考えや価値観を持っています。ただそれだけで、その考えや価値観に良いも悪いもないのです。すべては、生まれたときの状態と同じで、良し悪しはないのです。
自分の考えや価値観に執着することをやめれば、今以上に生きやすくなるかもしれませんね。
信暁(2024年9月18日)