とどまる、感じる、ひらく

ネガティブの原因は過去にある

2024年10月15日 19:59

 生活のなかで「どうして自分の中からは、ネガティブなことばかり出てくるのだろう」という思いが湧くことはありませんか。もしかしたら、そこには子どものときに体験したトラウマ的な出来事が関係しているのかもしれません。そのせいで、ネガティブが生活に入り込んでしまっているのです。

 このネガティブが出てくると、「自分の中にはネガティブなことに執着してしまう自分がいる」と思ってしまう人もいるかもしれません。

 

 しかし、それはまったくの誤解です。自分の人生の中で、特に子どものときにそう考えなくてはならない出来事があったということです。自分の中でまだ昇華しきれていないとも言えます。

 

 子どものときは、親からの理不尽な言動に対しても、良い悪いの判断をすることなく、すべて受け入れてしまいます。しかし、からだは親からの理不尽なことを感覚として感じ取ります。そして、その感じたことを記憶に留めてしまうのです。こういった同じような理不尽なことを親からされ続けると、からだは反応し続け、ひどければ病気にもなってしまうのです。 


 例えば、親から「あなたは本当に気がつかない子ね」と言われ続けているとします。そうすると、子どもは親にそんなことは言われないように、気がつくように一生懸命振る舞います。しかし、大人が、自分の言ったことも、子どもが一生懸命振る舞っている姿も、どちらも気に掛けることをしなければ、子どもはこれだけやってもまだ親はわかってくれないと思います。そして、このことをからだの感覚として記憶に取り入れてしまうのです。 


 それだけならまだいいのですが、成長するにつれ、「親はわかってくれない」が「自分のすることは誰もわかってくれない」と変換されて、その記憶をもとに、そこに感情がくっついてくるのです。 


 そのうち、感覚よりも感情が先に出てきてしまうようになり、他人に何か言われると「うるさい」と急に怒ってしまったり、「さびしいなぁ」という気持ちが突然降って湧いてきたりするといったことにもなるのです。 


 これは自分で意識してやっていることではないので、自分で制御できません。それだけではなく、上記のような言葉を言った後に、「なぜこんなことを言ったのだろう」と自分で疑問に思ったりもします。 


 私の場合は、母親が、「あんたはわがまま過ぎる」「あんたは自分勝手過ぎる」と言っているかと思うと、「あんたは優しいから」「あんたは良い子どもやから」などと、自分の機嫌で言うことをコロコロ変えていました。自分はというと、その都度親の言うことに合わせて振る舞っていました。 

 しかし、からだは「苦しい」とわかっていたので、子どものときは、よく風邪を引いて寝込むことがよくありました。そして、成長するにつれ「自分には本気で相手をしてくれる人はいない」という風に変換されていきました。 


 この言葉に感情がくっつき、分別がつくようになってからは、母親が言っていた言葉のニュアンスと同じような感じの言葉を他人から掛けられたとき、突然怒りが出たり、落ち込んだりという態度が出ていました。その後は、怒りに対して自己嫌悪に陥ったりしました。しかし、答えがわからないので、人が変わり状況が変わるなかで、同様のことがずっと続いていました。そして、そんなことばかりしている自分に対して、どんどん考えがネガティブになっていく自分がいることにも気づきました。 


 ネガティブな考えに支配されていると、たとえ他人から「ネガティブなことばかり言っている」と指摘されても、自分では直すのが難しいのです。それは、先にも書いたように、子どものときに原因があり、それを昇華させないと指摘されただけでは直せることではないからです。 


 それでは「どうすればいいか」ということですが、ネガティブなことばかりが出てしまうときに、まずは「ネガティブばかり言う自分は悪い」と否定しないことです。どうしても他人から指摘されると、悪いことをしている感じがして、自分がしていることを否定したくなったりします。しかし、いまネガティブなことが出てしまうのは、子どものときに元の出来事があったということです。ですから、この子どものときにあった体験を自分自身が認めてあげることです。 


 認めるためには、いまの大人の自分が子どもの自分に対して、「辛かったねぇ」「そんなこと言われて嫌だったねぇ」と優しい〈過去形の言葉〉で言ってあげることです。そうすれば、自分が本当に認められたと理解します。 

 この優しい過去形の言葉は、慣れていないうちは本当に親しい人から言ってもらうだけでもよいです。ただ、最終的には、自分が自分のことをしっかり認めてわかってあげる必要があるので、自分自身の声、言葉で、子どもの自分に言ってあげてください。そうすることによって、自分の中が変化していきます。 


 トラウマ的な出来事は、そのまま受け止めてしまうと生きていくことができないので、感覚としてからだの中に記憶されます。記憶された感覚には、成長するにつれ感情がくっつき、そのため時として、自分では思わぬ言動を取ってしまったりします。そういったことが繰り返されると、ネガティブに支配されてしまいます。 


 このネガティブに支配された自分を変えるには、自分で自分を認めわかってあげることです。 


 自分が自分を分かってあげることで、人生が変わっていきます。 


信暁(2024年10月15日)