とどまる、感じる、ひらく

することには「ワケ」がある

2024年11月29日 19:03

 自分が何かをするとき、やらないほうがいい、やってはダメだ……と思っているのに、やってしまうことはありませんか。いまするべきではないのに、本当にしたいことでもないのに、「どうしてこんなことばっかりするのだろう」と思ったこともあるのではないでしょうか。 

 なぜ、やらないほうがいいとわかっているのに、やってしまうのか。そういったときには、そうしてしまう「ワケ」があるのです。

 

 例えば、仕事でくたくたに疲れているのに、つい夜遅くまで、スマホでYouTubeを見てしまうなんてことはよくあるのではないでしょうか。

  夜更かししてしまうワケというのは、もしかしたら、仕事をしていると一人の静かな時間が持てないので、その時間が欲しくてみんなが寝静まっているときに一人の時間を満喫しているのかもしれません。その内面をもっと掘り起こしていくと、過去に家族から過干渉を受けていて、他人との境界が極端に小さいという「ワケ」が隠れているかもしれません。 


 あるいは、日頃はこだわらないことに対して急にこだわりが出てきて、それが何日間も続いてしまうということはありませんか。 

 これまでこだわっていなかったのに、急にこだわってしまうときには、自分のからだの調子が悪いからというのがあるかもしれません。確かに、からだを休めて体調を整えるとこだわりがなくなり、元の生活に戻ることができる場合が多いでしょう。 

 しかし、それだけで終わってしまうと、また同じような「こだわり」というものが、手を変え品を変え出てきます。こだわらないようにと、自分の意志でコントロールしようとしても、そう簡単には終わりません。だから、「自分のこだわり」として出てきたものに気がつくことが大事です。 

 特定のものごとだけにこだわってしまうというのには、やはりワケがあるのですが、そのワケに気づくためには、考えているだけではわかりません。そのワケがすぐにわからなくても、「自分のこだわり」を頭の片隅に置いて生活していると、それに関連したことが必ず日常生活で起こり、それに気づくことができます。そこをみていくことで、急なこだわりに対して優しい目で見ることができ、そのこだわりと一緒に居ることができるようになります。

 

 例えば、職場で自分が嫌いな人がいるとします。その人を見ていると、その言動に腹が立つし、そばにいるとイライラするので、なるべく関わらないようにしているかもしれません。けれども、自分のからだの調子が悪いときは、その嫌いな人の言動がいつも以上に気になってきます。長く一緒に居るといさかいが起きそうなので、家でゆっくりしようと、早く帰ったとします。でも、せっかく早く帰宅したのに、たまたま家族の何気ない言動に目が留まり、今度は、それが気になってゆっくりするどころではなくなってしまったとします。 

 ふだんは気に留めていないその言動が、どうにも気になるということが起きているとき、ただ、調子が悪いから仕方がないということにして、気になる言動を自分の記憶から消してしまうと、気になった言動が何もなかったようになってしまうでしょう。 

 けれども、その気になった言動を頭の片隅に置いておけば、元気になってから自分の嫌いな人がしている行動を見て、家族の言動が気になったワケは「これだ!」と気づくことがあります。「だからこれだけこだわっていたのだ」ということに気づくことができます。こういった気づきは、次の日に気づく場合もありますし、何日もかかる場合もあります。もっと内面を掘り下げることができるなら、なぜ嫌いな人の行動からこだわりが出てきたのかをみて、自分の気になった「ワケ」の裏に隠れている、おおもとの「ワケ」をみていくこともできるでしょう。

 

 上記のスマホの例は、私のことです。自分の境界線がないことに長い間気づいていなかったので、「こんなことをしているのは社会人として失格」というダメなレッテルを自分に貼っていました。境界線がないことに気づいてからは、「自分が一人きりになって境界線を設ける時間はここしかない」と無意識に思っていることに気づき、自分のしていることを肯定できるようになりました。 


 今では日常の中で起こることに関して、自分の中に少しこだわりが出てくると、「これは、自分に何を言ってきているのだろう」「自分に何を気づけと言ってきているのだろう」とすぐに考えます。そのとき、すぐに自分の中から出てくるものがなくても、「何か気づけと言われているのだろう」とこだわりを頭の片隅に置いておきます。するとそのうち、こだわっているものからその原因がわかり、「なるほどね」という安堵する気持ちや、より苦しい気持ちが出てくることがあります。この「なるほどね」というのが「ワケ」ということになります。

 

 この「ワケ」を知ることは、私にとって自分の生きづらさも和らげてくれるものなのです。だから、私に何かこだわりが出てきたとき、この「ワケ」を探すことが癖になりました。

 

 今日もいつもと変わらず、自分のこだわりから「ワケ」を探しています。 


信暁(2024年11月29日)