「気づく」ということ
2024年12月25日 17:58
日々の生活の中で、どんなときに「気づく」ということが起こっているでしょうか。
例えば、道端を歩いていて「こんなところにきれいな花が咲いている」と気づいたり、「あっ、ここにこんな可愛いワンちゃんがいたんだ」と気づいたり……。こんなふうに、肯定的な感じで「気づく」こともありますよね。
反対に、いつも怒らない人が些細なことで怒ったときに、「えっ、こんなことで怒るの」「こんな人だったんだ」と少し否定的な感じで「気づく」こともあると思います。この否定的感じの後には、声に出さなくても「こんな人だったんだ、気をつけよう」とか「かかわりを持つのはほどほどにしよう」などという言葉をつけていることがしばしばあると思います。
いま挙げた例は、どれも自分の表面的な気づきです。
別な例では、仕事で上司に褒められたときは、嬉しくて「よし」という気持ちが、からだの中にあることに気づくこともあるでしょう。反対に、上司に怒られ落ち込んだときに「あっ、気持ちが落ち込んでるな」とか「気持ちが沈んでるな」と気づくこともあるでしょう。こういったことは、自分の内面の気づきです。
このように「気づき」は、そのときどきによって、自分の表面的なことでも、内面的なことでも起こります。
誰もが、気づくということを日々当たり前のようにやっていますが、何か事が起こったときに、そのままいつもの気づきと同じように処理すると、肝心なときに苦しくなり、「居ても立っても居られない」ということが起こります。ですから、気づいてそのままにするのではなく、もう一歩踏み込んでみるということを、日頃からやってみてほしいのです。
どういうことかというと、特に否定的な気づきのとき、例えば、上記の些細なことで怒った人に「えっ、こんなことで怒るの」と思ったとき、「どうしてこの人の言動に反応したのか」ということを考えてみてほしいのです。
もし、相手が自分とは関係がない人だったら反応しないと思うのです。しかし、知り合いだったから反応した、しかも否定的な感じで。ここに、重大な意味が隠されています。過去に自分の家族、あるいは身近な人がしたこのような反応を目の当たりにして、嫌な気持ちになったことがあったのかもしれないということです。それが、記憶として残っているために否定的な反応になったのかもしれません。
もう一つの上司に怒られたときに落ち込んだ例でいうと、落ち込んだから気分転換しようと、「飲みに行って憂さ晴らしをするぞ」と憂さを晴らしても、落ち込みは変わりません。落ち込んだときに、「怒られても発奮して頑張る人もいるのに、どうして自分は怒られるとすぐに落ち込むのか」と考えてみることが大事になってきます。もしかすると、自分の過去において、家族や先生など目上の人から怒られ過ぎて、自分自身が怒られるということに対して委縮した考えが出来上がってしまっているのかもしれません。
このように、普段の気づきから、さらに一歩踏み込んで気づいていくと、「自分の生きづらさ」というものが、どこから来ているのかということが分かってきます。反対に、肯定的なことに関しても気づいていくと、自分が何に対して嬉しいのか、楽しいのかに気づき、生きる力が湧いてくると思います。
成人では、1日のうちで無意識に3万5000回意思決定をしているといわれています。意思決定をするにも、まず気づかないとできません。それだけ「気づく」ということは無意識ではあるけれど身近なものなのです。だから、「気づく」ということに重きを置いてほしいのです。憂さ晴らしをするよりも、気づいて自分の内面をみていくほうが、自分の苦しみに気づき、生きづらさを手放せる確率は上がっていきます。
こういった苦しみに気づくことは、裏を返せば、肯定的な気づきにもつながっていきます。最初の文での「こんなところにきれいな花が咲いている」ということに気がついたとき、「気づく」ことを習慣にしていると、その花だけでなく、いろんなところに目がいき、楽しさや嬉しさが倍増したりもします。また、その花を見ているときの自分の感情、からだの感覚にも気づいてみると、自分がどんなときに心地よさを感じることができるのかということにも気づくことができ、より自分の心地よい感覚へのセンサーがはたらくようになっていくと思います。こうなると、生きづらさよりも生きる楽しさが勝ってきます。
「気づく」ということを、自分の表面的なことで終わらせるのではなく、「その表面的なことがどうして起こったのか」ということから、自分の内面での気づきにまで発展させるといいと思います。そうすることで、生きづらさを解消していくだけでなく、生きる楽しさをも得ることができます。
「気づく」ということが、どれだけ自分自身に影響を与えているのかを、もう一度考えてみるのもいいかもしれませんね。
信暁(2024年12月24日)