とどまる、感じる、ひらく

ガスライターな母親

2025年01月24日 17:50

 元旦に実家に電話をかけた。新年早々、挨拶もそこそこに始まったのは、母の愚痴のオンパレード。 私の言葉には耳を傾けず、「自分がどれだけ大変か」を理解させようと必死に訴えかけてくる。電話を切った後も、どっと疲れが押し寄せる……ああ、またいつものことや……。 


 数日後、用事でメールを送ってみたけれど、返ってきたのは電話で聞いたことと、まったく同じ内容だった。肝心なことは何も書かれていない。ただひたすら愚痴を繰り返す。電話で聞いたことを蒸し返すだけだったので、私が聞きたかったことをもう一度尋ねると、それっきり返事は来なかった。ああ、やっぱりこの人は、自分のことしか考えていないんや……そう、確信した。 


 その時、ふと双子の孫のことを思い出した。二人ともいま6歳。私が彼女たちより一つ下の時、母親と長男に騙された。そう感じた出来事が蘇る。こんなに無邪気で可愛い子どもを、自分の腹を痛めた子を騙せるなんて、考えられない。妻に話すと、彼女は言った。「捌け口にされてたんだね」と。

 

 「なるほど、そういうことか」と腑に落ちた。 


 最近、ようやくはっきりと気がついた。私は、幼い頃からずっと、母にコントロールされ続けてきたのだと。 

母は、気分によって言うことがコロコロ変わる人だった。「嘘をつくな」と言いながら、平気で嘘をつく。「言い訳をするな」と言いながら、自分は言い訳ばかり。気に入らないことがあると怒ったり無視をし、かと思えば、必要以上に優しくしてきたり。「あなたのため」を強調して、私に罪悪感を植え付けた。

 

 私が勉強ができないと、「将来困るのは自分だ」と不安を煽るくせに、勉強を教えて欲しいと頼むと、「兄貴に教えてもらえ」「自分でやりなさい」と突き放した。

 

 大人になった今なら、それがコントロールだと理解できる。しかし、子どもの頃は、すべて自分が悪いから責められるのだと、本気で信じていた。

 

 今でも、あの時の罪悪感が蘇る。「あんたがこんなことをするから」「あんたが真面目にやらんから」「あんたがふざけているから」と、いつもネガティブな言葉の嵐だった。

 

 必要以上に否定され、自分の言ったことに責任を持たず、「そんなことは言っていない」と否定され、挙句の果てには、「あんたが言った」と責任転嫁までされた。

 

 これは、いわゆるガスライティングだ。ネガティブな言葉を浴びせることで、相手の自信を失わせ、混乱させて、支配しようとするコントロール。その結果、私は自分の境界線を失い、理不尽なことでも理不尽と思えず、コントロールされることによって、トラウマボンド(トラウマ的な絆)を築いてしまった。

 

 母親は、自分の子どもをトラウマボンドにしていることなど、露ほども知らないだろう。私自身孫がいる年齢になった今でも、母は可哀そうな年寄りを装い、親という立場を盾に、罪悪感を植え付け、私をコントロールしようとする。

 

 いつまで経っても、母はガスライターだ。過去の自分も、モラハラだけでなく、母と同じようにガスライティングもしていたガスライターだった。だから、私は決めた。その反省も含めて、私は、母との距離を置く。そして、改めて自分を見つめ直し、自分自身を生きたいと思う。

 

信暁(2025年1月23日)